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種子賢婦人に完全コントロールされておられ、吾輩は一穴主義であるなどと公言する。実に純情可憐な(今振り返れば)先生でした。その先生が私の卒論審査ではかなり頭をひねったらしい。いったい何が言いたいのか。卒論面接をもう一方、加地教授の同席で受けたが、加地先生ももうひとつガテンがいかないような顔つきでした。
実はこれは無理もないことで、書きなぐって本人もさて何が言いたかったのか、卒論作成の途中で分からなくなっておりました。
曰く、営利追及自体が自己目的そのものとなった現代社会。化石化した社会を救う新しい経営原理というより社会倫理(エートス)として『価値合理性』をもってしなければならないとの主張。ここで言う「価値合理性」とは
例えばブランド物のモンブランの万年筆よりも、息子がお小遣いを貯めてプレゼントしてくれた極普通の万年筆の方が自分にとって値打ちがある、大事なんだとする価値観そのもの。各人がこぞって、同質・大量を良しとし、数を頼んだ多数決ですべての物事を片付けてゆく社会。多数決あるいはそう導かれて出した結論で果たして今までに正解であったものがありましたか。個々人が、それぞれの価値判断により、より良いと考えた上での判断を求めてゆく社会倫理を持つようにならないと、この社会の行き詰まりは解消されることがない。
何のことか分かりますか。これを書いたのが昭和40年11月リーグ戦終了から12月25日午後4時締切まで。
提出時、卒論の要約書を添付せよとの注意を見逃していて、その作成に大汗をかいてなんとか提出時間に滑り込んだ。
あれから20年後、著名な社会学者・堺屋太一が『知価革命』という著書を世に問うた。その時はまさに俺が言いたかったことをやっと言ってくれたと一人ガテンして悦に入っておりましたが、今この項を書く上で改めて読んでみるにチョイト違っているようです。
引用『ところで知価はそうではない。例えばあるデザインのネクタイが去年は流行で2万円でもよく売れた。それが今年は流行遅れになって今年は4千円でバーゲンセールに出ている。この現象を知価を失ったと考える。」・・・私の主張とどちらが納得がゆきますか。
生まれてすぐにはお宮参り、七五三.毎年の誕生日はバースデーケーキを欠かさない。クリスマスには俄かクリスチャンと変身。毎朝家の仏壇に手を合わせる人も、神社の前を通る際は、深ぶかと一礼を捧げる。神仏キリスト混交の生活に何も不思議さを感じない大和民族にとって一番理解しがたいのがGOD BLESS MEの信仰の世界。まず神ありきの世界であります。神が存在することを前提とういうか、それが当たり前の世界と、神の存在を突き詰めて考えない世界。この彼岸と比岸が同居する現実。比岸にいる我々にはこの救われてあることの確信の重要さが理解できないが、カルバン派に代表されるプロテスタントにとっては永遠の命を与えられるか否かの瀬戸際ギリギリの関心事であります。ストイック(禁欲的)な生活、すなわち適正な利潤追求(社会生活そのもの)で当然蓄積される財は浪費されることなく富へと積み上がってゆく。この行為の総和が資本主義の精神を生みだしたというのがマックスウエーバーの云わんとするところです。中世の鍛冶屋の子は鍛冶屋、王の子は王となる封建調和の世界では考えられなかった個人・自己の覚醒が宗教的個人主義からもたらされ、ストイックな経済活動をより駆り立ているうちは社会のエートスとして確立されて、それはそれは理性・抑制の利いた秩序ある社会を生みだしておりましたが、世界が格段に広がり、民族・地域の経済競争の様相を帯びてきますと、手段であったはずの営利追求が自己目的化してしまうことになった。かくして現在社会は営利追求が全てを支配する化石化した社会と変貌してしまった。
そこで、この現実社会を救うための新しい経営理念を提案しようというのが我が卒論でありました。、
ところで先に申し上げたマックスウエーバーが唱えるところの「資本主義の精神」とは何かといえば、近代社会に初めて現れた、適正利潤を守り、企業の存続を最優先して、日々営業活動に励むという行為そのものを現す言葉であります。考えてみれば、新大陸発見により世界の全容が解り、物産をある地点から遠くの地点に運びもたらすことひとつをとっても、そこには冒険的あるいは海賊的儲けを嫁しても十分商品価値を損なわない時代に、かなり控えめな一定の利潤を乗せるに止める動きがどうして起こってきたのだろうかという疑問。
マックスウエーバーはこれをプロテスタンティズムの倫理に求めました。カルバンを提唱者とするプロテスタンの教えでもっとも厳しい教えは「運命予定説」と言えます。このカルバンの予定説では、救済される人間は予め決定されており、旧教の説くように、人間の意思や努力、善行の有無などで変更することは出来ない。ましてや免罪符を購えば天国に行けるわけではない。だから自分が救われてあることの確信は、自分のみで確かめるしか道はなく、親兄弟といえども救いについては何の関わりも無い。出家して救いを求めたところで、予定されていなければ意味が無い。かくして、現世で禁欲的労働に身を任せ(世俗内禁欲)、社会に貢献し、この世に神の栄光をあらわすことによってのみ、自分が救われていることを確信できる。まことに凄まじい宗教的個人自覚作用であります。
楠瀬さんは高知の出身、土佐高校の秀才であります。その彼が落ちたとなれば私も心してかからねばと思い、試験問題を聞いておくことにした。楠瀬さんは快く、覚えていた問題を正解つきで教えて下さった。とくに日本国憲法を問う問題が印象に残っていいる。これで傾向と対策が出来たとばかり入社試験に臨んだ。本社は大阪・堂島にあった。堂島といえば北の新地のど真ん中。夜ともなれば、赤い灯・青い灯が燈る享楽の巷であります。そんな町を突き切って木造2階建ての歩けばギシギシ音がする本社。忘れもしない安達課長の仕切りで試験を受ける。答案用紙をめくってあっと声を上げそうになった。なんと、前回楠瀬さんが受けた試験と同じ問題だ。この時の入試担当でもあった安達課長さんが、同じ問題を使い回していた。入社してから、かの安達課長さんともお付き合いができましたが、どう考えても同じ問題を使い回すような芸当ができる人とは思えなかった。結果、我が答案はほぼ満点に近いもんであったらしい。試験担当者は開白以来の秀才が来たと大騒ぎだったとか。おまけに教養科目ばかりだが、優が30ほど。サッカー部のキャップテンでもある。重役面接は翌日だったか。この会社のウルトラワンマン入江一雄社長を中心に、両脇重役連中が居流れる。
これもあとで徐々に知ったことだけど、入江商店は小さいながら、このワンマン社長のもと、旧日本製鉄、そのころは八幡・富士に分かれていた製鉄会社専門の納入窓口商社として隠然たる実力を有し、知る人ぞ知るユニークな会社でした。ちょうど7年ほど前から、学卒を採用するようになったばかり。商大G9・河井雄輔氏がはや課長で頑張っておられた。おまけにG10森本茂男氏はサッカー部の先輩であります。
そんなイケイケの社風を誇る重役連中は見るからに曲者揃いの印象。よくは覚えていないが、家庭状況・長男で自営らしいが店を継がなくていいのかとか、クラブ運営はどうのとかの質問があり、最後に卒業論文の話となった。・・卒論のテーマはほぼ決めていて、ドラッカーとマックス・ウエーバーの良いとこどりをしたもの。すなわち『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をベースに新しい経営理念を提案しようという大それた構想。
語るうちに熱を帯びてくるほど自分なりの考えを披露している時、突如ワンマン入江社長が一言、私を指さしながら叫ぶ声が聞こえた。「お前明日から来い」。かくして合格通知を口頭で頂く仕儀にあいなりました。ほんとこれでいいのかなとの思いを胸に抱きながらも。
昭和40年正月から練習は益々厳しさを増してゆく中、4回生となった段階で人生の選択・就職活動にも励まなければならない。当時確か就職活動解禁は7月ころではなかったかな。世の中の景気はといえば、前年までの就職売り手市場であったのが、3月6日の山陽特殊製鋼の倒産(負債500億)に象徴されるように、一転不景気風がふきだしていた。そうなれば企業の学生選択も厳しくなるのは当然。そんな世の中の動きも無頓着に音楽関連の企業という訳でYAMAHA当時日本楽器製造株式会社を第一希望に選んだ。あとで分かったことだが、楽器やさんと音楽活動とはほぼ関係無いということ。そんなことも分からず受けた就職試験。開通したばかりの東海道新幹線で浜松へと出かけたが、なんと一次のペーパーテストで落ちちゃった。算数の問題が解けなかったんだ。(2年後弟・啓三が同じくYAMAHAにトライして見事入社を果たして勤めあげ2年前定年を迎えた。)そして殿村先輩が引っ張って下さった大阪ガスの入社試験を次に受ける。その次第は2008.6.26項に記したとうり、あえなく失敗。かなり力を入れて下さった殿村先輩にはいまだに申し訳なくおもっています。
出足でしくじった我が就職活動はこの辺りから迷走を始めた。阪和興業・杏林薬品等方針もなにもあったもんではない。究極は野村不動産を受けるつもりで発送した願書が、なぜか野村証券に届き、慇懃無礼な御断りの手紙を頂いたり。その後のことを考えると、野村不動産への願書が無事届いておれば、かなり違った人生の展開があったような気がします。なかなか決まらない就職はどうやら田中先生の耳にも入っていたらしい。
同じ学年ながら一年余分に学生生活を楽しんでおられた楠瀬さんも就職で苦労をされていた。その楠瀬さんが受けてダメだった株式会社入江商店が第3次の募集を懸けてきた。そろそろ内定を獲得しておかないと、サッカーのリーグ戦に差し支えてくる。西明石にも入江商店があるが、これは米と氷を売るお店だ。まさかそこまでのことはなかろうと、鉄鋼関連という情報のみを頼りに受けることとなった。
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永遠の自営業者で好奇心の塊。
自他ともに許す体育会系ミュージシャン(SoccerとTronbone)